犯罪被害者の加害者に対する損害賠償命令制度
この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)
皆さんは犯罪被害者の加害者に対する損害賠償命令制度をご存じですか。
特定の事件については犯罪の被害者が犯人の刑事裁判を担当した裁判所に対して損害賠償命令の申立をすることによって民事訴訟を提起せずに簡易に賠償命令を出してもらうことができます。
特定の事件とは、代表例として殺人、傷害、危険運転致死傷、強制猥褻、強姦、逮捕監禁罪、誘拐罪などです。
これらの事件の被害者、遺族は損害賠償命令制度を利用することができます(なお申立を弁護士に委任することも可能です)。
被害者が申立をする場合は、まず刑事事件裁判を担当した裁判所に申立書を提出しなければなりません。
裁判所は申立書を審査の上で申立書の副本を刑事被告人に交付します。
刑事被告人が複数いる場合でも1つの申立書で申立できます。
費用は請求額にかかわらず1人あたり一律2000円です。ただし後に民事裁判に移行した場合は、その時点で民事訴訟に本来必要な手数料との差額を納めることになります。
申立後、実際に賠償命令の審理が開始されるのは被告人に対して有罪判決が出た後になります。
賠償命令の審理を行うについては、当事者を呼び出さなければならないとされており、また審理は非公開の手続きで行うこともできることとなっています。
証人尋問をする場合には、証人への付添、遮へい、ビデオリンクも利用できることとなっています。また審理は原則4回以内に終わらせなければならないことになっています。
審理の結果、4回以内で裁判所の判断ができる状況になれば裁判所は決定書を作成して当事者に送付することになり、この決定に対して2週間以内に当事者から異議がでなければ、この決定は判決文と同じ効力を有することとなります。
よってこの決定書で財産の差押ができることとなります。
決定に対して当事者から異議の申し出があった場合には、通常の民事訴訟に移行することになりますので前述のように手数料の差額分を納めなければなりません。
また4回の審理でも裁判所の判断が決まらない場合は、裁判所は、損害賠償命令事件を終了させる旨の決定をしなければならず、この場合も、通常の民事訴訟に移行することになりますので前述のように手数料の差額分を納めなければなりません。
現在、傷害の被害者の方から依頼を受けて賠償命令の手続きを行っています。
いつも行っている民事裁判と違って証拠を出す時期なども異なり若干戸惑いもありますが、スムースに賠償命令を得られることによる被害者の方のメリットは大きいと思います。
示談ができないケースでは今後どんどん活用すべきではないでしょうか。
この記事を書いたのは:
旭合同法律事務所(名古屋)