「フルパッケージ型遺言」弁護士に相続分や分割方法を委託する

この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)

フルパッケージ型遺言とは、私が勝手に名付けたものですが、これは、遺言者が、弁護士である第三者に、相続分や分割方法の指定を「委託」する遺言を言います。
つまり、どの相続人にどの遺産を相続させるかを弁護士に委託するというものです。

例えば、遺言者は一人暮らしをしていますが、自分で自分のことができなくなったときに、子供らのうち誰が自分の面倒を見てくれるか今は分からないが、将来、自分の面倒を看てくれた子供に財産を多く相続させたいという気持ちがあるとします。
でも、そういう事態になったときにはもしかしたらもう遺言を作ることができない状態かも知れません。

また、遺言者にはすでに認知症の妻がいて今は遺言者が監護していますが、遺言者が亡くなった後、どの子供が妻の面倒見てくれるか分からない、面倒見てくれることになった子供に財産を多くあげたい。今はどの子供がそうしてくれるか分からないが、遺言者自身も病弱でいつ倒れるか分からないということもあるでしょう。

そこで、遺言書において、第三者である弁護士に、相続分や分割方法の指定を「委託」し、かつ、遺言執行者に指定しておくのです。そうすると、遺言者が亡くなった後、弁護士が遺言者の意思に沿うように、相続分や分割方法の指定を行い(誰にどの財産を与えるかを決める)、かつ、それを実現するのです。

これは、弁護士を全面的に信用していただいて、まさに遺言者に成り代わって、相続をすべて取り仕切るという遺言です。
私は、この遺言をフルパッケージ型遺言と名付けていますが、こうした遺言もできます。フルパッケージ型遺言の場合、弁護士の責任は重大ですが、相続分や分割方法の指定に際しては、相続人やその他の関係者から事情を聴取するなどして、遺言者の意思に沿うように慎重に判断します。


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旭合同法律事務所(名古屋)