相続と離婚における税務のポイント対談

この記事を書いたのは:木下敏秀

対談者 

旭合同法律事務所 弁護士木下敏秀

木下 敏秀(きのした としひで)

弁護士

広島県出身。創価大学卒業。平成6年旭合同法律事務所入所。

公益内部通報制度の制度設計、コンプライアンス委員会の委員長、保育園の第三者委員に携わり、中小企業支援の認定機関である。近年は相続、離婚、成年後見の家事事件の担当案件が増加しており、成年後見事件では愛知県弁護士会からの推薦事件も多く担当している。

旭合同法律事務所 弁護士前田大樹

前田大樹(まえだ だいき)

弁護士

熊本県出身。創価大学・京都大学法科大学院卒業。令和2年旭合同法律事務所入所。

困難に直面した方に寄り添い、共に問題解決を実現できる弁護士に憧れを抱き、小学生の頃から法曹を志した。社会情勢の変化に伴い生じる新たな法的ニーズに鋭敏に対応し、多角的な視点から物事を捉え、依頼者に最善の解決策を提案できるよう日々研鑽している。


上島大慶公認会計士税理士事務所 公認会計士・税理士上島大慶

上島大慶公認会計士税理士事務所

上島大慶(うえじま だいけい)

公認会計士 税理士

愛知県出身 創価大学卒

平成2年より10年間、東京の公認会計士事務所で非営利法人中心の監査業務に従事

平成12年上島大慶公認会計士税理士事務所開業

大学・幼稚園の学校法人監査、介護施設・保育園の社会福祉法人会計、政治資金監査、中堅・大企業の連結会計・連結納税システムの導入・運用コンサルなどの公認会計士業務をメインとして、非営利型の一般社団法人の会計税務や個人の身近な税務相談にも応じている。

(木下)

 昨今の高齢化社会に伴って相続に関するトラブルが増加しています。相続案件を担当するときに税金で悩むことも多くなっています。そこで、相続と税務の問題点のポントについて話し合いをしたと思います。


(前田)

 相続税の申告期限は、被相続人の死亡後10カ月と期限がありますが、相続人間の争いが大きいと遺産分割協議がまとまらない場合があります。この場合の相続税の申告はどうしたらいいでしょうか。

(上島)

 この場合は未分割の財産について法定相続分どおりに分割したと仮定して税の申告及び納付する必要があります。特に小規模宅地の特例については、申告期限内に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出していないと分割後に適用が受けられませんので注意が必要です。また、申告期限内に相続税の申告・納税をしないと「無申告加算税」も課税されるため十分に気をつけてください。

(木下)

 法定相続人は相続税全額について「連帯納付義務」がありますよね。自分の法定相続分だけ納税すれば大丈夫といえないのでこの点も注意すべきですね。

(前田)

 未分割遺産のまま相続税の申告をしたとして、遺産分割協議が成立した場合にはどうなりますか。

(上島)

 遺産分割協議が成立して各相続人の取得遺産が決まれば、相続税額が増える場合には「修正申告」、減る場合には「更正請求」をすることになります。

(木下)

 実務的には既に納付された相続税について遺産分割協議時にお互いに納税額の金銭清算をする事例もあります。この場合には実際には修正申告や更正請求をしない事例も存在しますね。

(前田)

 遺産分割の対象となる遺産と相続税申告の対象となる遺産では違いはあるのでしょうか。

(上島)

 生命保険金や死亡退職金は原則的には遺産分割の対象遺産にはならないですが、相続税の申告では「みなし相続財産」として課税対象になります。ただ、生命保険金、退職金については非課税枠がありますので全てが課税対象にはなりませんのでご留意ください。

(木下)

 逆に、相続開始前に受けた法定相続人が受けた「特別受益」については、相続税の課税対象となるのは「相続開始前の3年以内」に限られますが、遺産分割においては、3年を超える「特別受益」も遺産分割にて考慮する財産になります。いろいろ法務と税務での違いがありますので専門家への確認が必要ですね。

(前田)

 被相続人が生存中に財産の贈与を受ける税務的によい方法はありますか。

(上島)

 その1つとして「相続時精算課税制度」の利用があります。これは、贈与時に「2500万円」までの控除があり、「2500万円」を超える贈与でも一律「20%」の税率の贈与税を支払うことで足りる程度です。

(木下)

 相続時精算課税制度のメリットはほかにもありますか。

(上島)

 この制度のメリットとしては、生前贈与を受けた時点の時価で遺産総額の計算ができる点もあります。そのため、値上がりが期待できる資産や収益性が高い資産については、「相続時精算課税制度」を利用することで相続税の負担を軽減化するメリットもありえます。

(前田)

 続いて離婚問題について対談をしたいと思います。離婚事件も増加しており、税務の問題は我々も注意する必要があります。まずは離婚の慰謝料や財産分与で金銭を受け取る場合には税金はかかるのでしょうか。

(上島)

 離婚の慰謝料や財産分与の金銭の受け取りについては、原則的には税金はかかりません。ただし、例外的に、慰謝料や財産分与の金額が夫婦の事情を考慮してあまりに多額過ぎる場合には金銭の受け取りをした者に贈与税がかかる場合があります。全てが大丈夫ではないので、専門家への相談が必要ですね。

(木下)

 また、税金を免れるために偽装離婚したと判断される場合には贈与税がまるまる発生することがあります。この点も注意をしないと思わぬ落とし穴となる可能性もあります。

(前田)

 金銭ではなく不動産を財産分与した場合にはどうでしょうか。

(上島)

 金銭以外の財産を財産分与した場合には「資産の譲渡」になりますので、譲渡する人に「譲渡所得税」の問題が生じます。そのため、分与財産の取得価額よりも時価が値上がりしている場合には、その値上がり分について譲渡所得税の課税がありえます。

(木下)

 この点を意識しないで離婚交渉を進めると予想外の多額の税金に驚くという問題もありますね。ただ、居住用不動産については一定の条件で3000万円の譲渡所得税の特別控除がありますので、この点も忘れてはいけませんね。

なお、配偶者については居住用不動産を贈与する場合には一定の税制優遇措置(最高2000万円)はあります。税務的には離婚の財産分与ではなく、「離婚前の贈与」として工夫をする事例もありえます。

(木下・前田)

 旭合同法律事務所では皆様の紛争解決において税務の問題もフォローして解決に尽力をしています。予想外の税金に悩まされないよう専門家である我々にご相談ください。






<法律用語の説明>

遺産分割協議

相続人の全員による遺産の分割について話し合いのこと

法定相続分

それぞれの相続人における法律上定められた相続財産の取り分の割合

連帯納付義務

他の相続人などが納めていない税金を連帯して納める義務

特別受益

共同相続人の中に,被相続人から贈与などの利益を受けた者がいる場合に,その分を公平の見地から考慮すること


この記事を書いたのは:
木下敏秀