トヨタ・パワハラ事件の問題点に学ぶ
この記事を書いたのは:松波克英
トヨタ・パワハラ事件の問題点
トヨタの社長が、パワハラ被害者遺族に謝罪をしたとの衝撃的なニュース流れていました。
今回の事件については、
① パワハラに対する相談窓口が無かったこと
② パワハラによる自殺がトップに報告されていなかったこと
③ 社内にパワハラに対する意識が不足していたこと
等の問題点が指摘されています。
来年4月から対策が義務付け
昨年6月に施行された改正労働施策総合推進法では、職場におけるパワハラ防止のために,就業規則の改正、相談窓口設置など、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務とされており、中小企業についても来年(2022年)4月から義務付けされることとなっています。
事業主が措置を講じていない場合には,厚生労働大臣による指導や勧告等の対象となります。
一部報道では、6割の中小企業が、対策が義務付けられていることを知らないことが調査によって判明したとされています。
職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)(厚生労働省)
パワハラ対策のメリット
裁判の場でも、パワハラの放置により数千万円の損害賠償が認められている例もあります。
企業の運営自体にとっても,パワハラは損失が大きく、環境悪化による仕事への意欲の低下,健康悪化、非効率化をもたらすばかりか、離職率増加,人材が集まらないと言った人事上の損失も想定されます。
また、職場のトラブルへの対応,懲戒処分の負担,訴訟リスクなども大きな負担です。
逆に、パワハラ対策が十分になされることによって企業価値を高めることができ、対策に積極的な企業の姿勢は,従業員,取引先,消費者等に対する信用性を高めることにつながります。
具体的なパワハラ対策
パワハラ防止のために企業がとるべき対策としては、
① トップが自らパワハラを許さない方針を明確に社内に打ち出す。
その上で、就業規則を改正し、社員手帳,掲示板等で周知徹底し、加害者には法的責任追及・懲戒処分等の断固たる姿勢をとることを明記すべきでしょう。
今回のトヨタ事件では、労災認定が報道されるまで、事件が社長には伝わっていなかったようですが、直ちに社長自ら遺族に謝罪するとともに、社内の防止体制を作った点は、重要だと思います。
② 相談窓口を設置する。
早期に相談して早期に解決することが企業にとっても大きなメリットとなります。
また、社内で相談できる体制がないと,企業が訴えられる可能性も出てきます。ぜひ、社内の各部署と関係のない専門の部署を設け,社外の専門家(相談員)を配置することが望ましいと考えられます。
弁護士事務所など外部委託も有効です。
③ 社員研修を行う。
知識の欠如,認識の甘さが問題を誘発します。
どのようなことがハラスメントになるか認識させること、企業方針を周知・徹底させることが重要です。
パワハラ対策は弁護士にご相談を
私も、先日ある企業で、パワハラについての研修を担当しました。皆さん熱心に聞いていただきました。また、私は、企業のパワハラの相談窓口にもなっています。
是非、来年の義務化に当たって、弁護士にご相談いただき、早期に対策を取って下さい。