相続・遺言

公正証書遺言が無効とされた事例

被相続人(元医者)は、昭和55年4月25日付けで「全財産を妻に相続させる」という自筆証書遺言を書き残していたが、その後、平成19年3月2日付けで「全財産を妹に相続させる」という「公正証書遺言」を作成した。

妻は平成19年4月21日に死亡し(79歳)、被相続人は平成19年8月27日に死亡した(82歳)。

その後、被相続人の相続人らの間で、上記公正証書遺言が有効であったかどうかについて裁判に発展した。

裁判所は、

①被相続人はうつ病、認知症を患っており、公正証書遺言が作成された直近の時期には、大声独言、幻視幻聴、妄想などの問題行動が見られ、情緒不安定、易怒性などから複数の薬剤が投与されていたこと

②被相続人は平成19年2月14日に転院しているが、この転院は妹の一存で行われ、また、被相続人の住所も妹の住所に変更され、しかも、妹がその住所で被相続人の印鑑登録まで行い、その上で公正証書遺言の作成に必要な印鑑証明書の発行をしていること

③公証人による作成手続きを見ても、遺言書の作成は妹からの申し出によりなされたものであり、被相続人の住所の確認が不十分であり、作成にあたっては妹の立ち会いを排除せず、署名は公証人の代筆であるが本人に署名させるように試みていないし、被相続人の視力障害にも気づいていないことなどの疑問があること

④公正証書遺言作成当時、未だ妻は生存中であるが、それにも関わらず、全財産を妹に相続させる旨の公正証書遺言を作成する合理的な理由が見当たらないこと

などから、本件公正証書遺言は遺言能力を欠いた状態で作成されたものであり無効である、と判決しました。

@東京高裁平成25年3月6日判決(判時2193号12頁)

(コメント)

本件は、公正証書遺言作成当時、入院していたこともあって、被相続人の症状がカルテなどに記載されていたこと、が大きなポイントであったと思います。また、公正証書作成の経緯として、住民票が妹の所に移動され、その住所地で新たに実印登録がなされて印鑑証明書が発行されている、そしてその印鑑証明書を使って公正証書遺言が作成された、という不自然な経緯があったのも裁判官の判断に大きな影響を与えたと思われます。 ちなみに、この事件では、第一審では公正証書遺言は有効とされましたが、高裁において無効と判決をしたものでした。


この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)

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