LGBTQ理解増進法が議員立法で制定され、2023年6月23日に施行されました。
この記事を書いたのは:松波伸一
正式名称は、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」です。
この法律はLGBTQに関する国民の理解が十分でない現状に鑑み、制定されました。
1 努力義務の例示
法律では、事業主と学校に課される努力義務が具体的に例示されています。
事業主の努力義務の内容は、
・普及啓発
・就業環境の整備
・相談の機会の確保等
です。
学校の努力義務の内容は、
・教育、啓発
・教育環境の整備
・相談の機会の確保等
です。
2 LGBTQに関する最近の裁判例
令和5年7月、最高裁判所で、戸籍上は男性だが、女性として生活している人に、国が女性用トイレの利用を制限したことは、具体的な事情を考慮して違法だとする判断が下されました。
この判決は5人の裁判官全員の個人の補足意見が付いていて、今崎裁判長が述べているとおり、この種の問題は一律の解決策になじむものではなく、事案に即した対応、解決策を模索するよりないでしょう。
3 LGBTQ理解増進法
事業者に「就業環境の整備」、学校に「教育環境の整備」の努力義務が課されています。
罰則等は設けられず、努力義務が規定されるにとどまりましたが、事業者がこの努力義務に反した場合、安全配慮義務違反などが認められる可能性があります。
したがって、労働者、学生・生徒・児童から、職場や学校におけるLGBTQに関する環境が適切でない場合に、適切な環境を求めたり、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償を求めたりできる場合があります。
他方で事業主は、職場でLGBTQの方がいらっしゃることを前提に、労働環境を整備する必要があります。
4 お気軽にご相談を!
職場や学校で生きづらさを感じている方や、職場の環境整備をどうすればよいかお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。