要保護世帯向け不動産担保型生活資金について

この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)

平成19年4月1日以降、持ち家のある人が生活保護を利用する場合、次の3要件に当てはまるときは、生活保護を受ける前に、この制度による貸し付けを求める扱いがされるようになり、現在もその扱いが継続しています。

この制度の対象になる3要件は、次のとおりです。
1 本人及び配偶者が65歳以上であること。
2 居住用不動産の資産価値が500万円以上であること。
3 居住用不動産に賃借等の利用権や抵当権等の担保権が設定されていないこと。

制度の内容は、次のとおりです。
この制度は、要保護者が所有する不動産に住み続けながら、その不動産を担保に都道府県社会福祉協議会から生活資金の貸し付けを受け、保護者本人が死亡後に、担保となっていた不動産を処分して貸付金の回収をはかるという内容です。貸付限度額まで貸付けを受けても、なお要保護者が生活に困窮している場合は、生活保護に移行します。

この制度は、居住用不動産の活用を徹底させることによって、生活保護費の抑制をはかり、かつ、扶養義務を果たさない者に対する不動産相続を防ぎ、社会的不公正を是正する目的で創設されました。

この制度による都道府県社会福祉協議会からの貸し付け金額と貸付限度額は、次のとおりです。貸付限度額に達した時に貸付けは終了し、その後は生活保護に移行します。限度額に達する途中で本人が死亡した時も貸し付けが終了し、担保不動産は処分されて貸付金の回収がはかられます。
1 月々の貸付金額は、その世帯に対する生活扶助費の1.5倍の金額から世帯の収入充当額を差し引いた額です。
2 貸付限度額は、戸建ての場合は土地建物の評価額の7割。分譲マンションの場合は評価額の5割です。

この制度に対しては、生活保護制度では持ち家の保有が認められているのに、65歳以上の高齢者に限って、不動産を担保に借金を事実上強制する結果になるという批判があります。国は、生活保護利用者の生前に何の援助もしない扶養義務者が保護利用者の不動産を相続するのは、国民の理解を得られないとして、制度を継続させています。


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