不動産の売主の修復義務

この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)

平成23年2月10日、私は、千葉県浦安市にある不動産(土地・建物)を購入する契約を締結しました。
売買契約書には、物件の引き渡し前に天災地変によって物件が毀損したときは、売主は補修した上で物件を引き渡すこととなっていました。
その後、3月26日に物件の引き渡しを受けました。

ところが、その後、引き渡しを受けた建物が傾いていることが分かったのです。
その原因は、物件の引き渡し前にあった3月11日の東日本大震災による液状化現象によって傾きが生じたことが分かりました。

そこで、私は、売主に対し、アンダーピニング工法(必要費用764万円)という方法によって傾きを修復するように求めましたが、売主は、修復方法としてウレタン樹脂注入法(必要費用230万円)が妥当だとして、私が求める修復方法を受け入れてくれませんでした。

仕方なく、私は、売主が修復義務を履行しないことを理由として、修復に必要な費用などについて損害賠償を求めて提訴したのです。
すると、裁判所は、①アンダーピニング工法は、再液状化時に再び傾きが発生することを予防する効果があるとされており、修復の範囲を超える土地改良の効果があると考えられること、②売主が主張するウレタン樹脂注入法でも地盤補強の効果が見込まれ、③東日本大震災の発生後、浦安地区において相当程度の採用実績があること、などから、売主にアンダーピニング工法による修復を義務づけることはできない、としました。
そして、売主が修復できないのは、私がウレタン樹脂注入法による修復に協力しないためであるとし、売主には修復義務を履行していないことについての帰責事由があるとはいえないとして、私の損害賠償請求を棄却したのです。

@東京地裁平成25年1月16日判決(判時第2192号63頁)

(コメント)
本件は、修復方法に争いが生じてしまい裁判にまで発展したケースのようです。
売主が主張する修復方法が、この地域での修復方法として多くの実績があったのが大きなポイントだったように思います。


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旭合同法律事務所(名古屋)