地方税滞納整理機構
この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)
国や地方自治体の財政が厳しくなったこともあり、滞納者に対する徴収行為が積極的に行われるようになりました。
愛知県では、「愛知県地方税滞納整理機構」という任意団体を立ち上げ、地方税(市県民税や国保料など)の滞納者に対する徴収活動を強力に推進しています。
ただ、悪質な滞納者(払えるのに払わない滞納者)に対して厳しく対処していただくのは良いのですが、払いたくてもなかなか払えず、少しずつ分納している滞納者に対しても同じような厳しい対応をしている気がして心配です。
後者の方の場合、次に述べるような強制執行をされると、途端に生活ができなくなってしまいます。
そもそも、国や地方自治体は、国税や地方税などの税金滞納者に対して「滞納処分による差押え」という強制執行をすることができます。
そして、この「滞納処分による差押え」は、「裁判所による差押え」と異なり、差し押さえることができる範囲が非常に広くなっています。
例えば、「給料」に対する差押えについて言いますと、裁判所による差押えの場合は、原則として4分の1までしか差押えができませんが、滞納処分による差押えの場合はもっと多くの金額まで差押えができます。
しかも、先に述べた地方税滞納整理機構は、効果的な徴収をするために、「滞納者の承諾書」という書面を滞納者から取り付けているようです。この承諾書は、簡単に言えば、給料全部を差し押さえられても文句を言いません、というものでして、この承諾書があると、給料のほぼ全額を差し押さえることができるようになります。
地方税滞納整理機構は、滞納者に対して、給料を差し押さえますよ、いやなら、早く税金を払ってください、併せて、今回すぐに差押えない代わりに「承諾書」を提出しなさい、それが嫌なら、給料の差押えをします、などと言っているようです。しかも、この承諾書は、滞納税の分納の誓約書と同一の用紙となっており、分納誓約書兼承諾書というものに署名させるようです。
そして、滞納税の分納が遅れると、すぐに給料のほぼ全額を差し押さえる、という訳です。これをされると、滞納税を払いたくてもなかなか払えず、少しずつ分納している滞納者は、生活が破綻し、家賃も払えず路頭に迷うことになってしまいます。
国や地方自治体には、税金を徴収するために大きな権限が与えられていますが、そうした権限が適切に運用されることを期待します。
この記事を書いたのは:
旭合同法律事務所(名古屋)