再度の執行猶予
この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)
- Q 私は2年前に窃盗事件で懲役1年6月、執行猶予3年の判決を受け、普通に生活していたのですが、先日交通事故を起こしてしまい、被害者に怪我を負わせてしまいました。
私は、刑務所に行かなければならないのでしょうか? - A もし今回の交通事故(自動車運転過失傷害罪)で懲役1年の実刑判決を受けると、前の窃盗事件の執行猶予が自動的に取り消されることになりますから、1年6月+1年=2年6月刑務所に行かなければならないことになります。
- Q 今回の交通事故については、執行猶予をつけてもらうことはできないのでしょうか。
- A 今回の事件に対する宣告刑が1年以内の懲役又は禁錮の判決であること、情状に特に酌量すべきものがあることという2つの条件を充たせば、「再度の執行猶予」が認められることがあります(刑法25条2項)。 この場合は、刑の執行が猶予されますから、刑務所に行かなくても済みます。
- Q 再度の執行猶予というのは、難しいのでしょうか。
- A 再度の執行猶予がつくことは、実務上非常にまれです。
私が担当したある事件では、ある違法な業務を行い執行猶予の判決を受けた女性が、執行猶予期間中に、生活に困窮し、同じ違法な業務を行ってしまい刑事事件になりました。
再犯であり犯情は良いとは言えませんでしたが、女性には9歳の子どもがおり、犯罪の動機も子どもの教育費、生活費を稼ぐためでした。
女性は一生懸命仕事をさがしていたのですが、高齢のため仕事が見つからず、子どものためやむを得ず再び犯罪に手を染めたのでした。
裁判所は、以上のような背景を理解してくれ、女性が刑務所に行った場合残された子どもがあまりにも不憫であること、生活保護を受ける目処が立ち、再犯の可能性は少ないことなどの事情を斟酌してくれ、再度の執行猶予を認めるという温情ある判決をしてくれました。
- Q 私の場合は、どういうことに気をつければいいでしょうか。
- A あなた自身の過失が軽微であること、被害者の怪我の程度が軽いことが前提になりますが、被害者との示談を早期に成立させることも必須だと思います。あなた自身誠意ある対応をするとともに、担当される弁護士さんに是非早く被害者と示談をしていただけるように頑張ってもらってください。
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旭合同法律事務所(名古屋)