内縁解消による財産分与義務の相続性

この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)

内縁関係は、婚姻届を出していないだけでその実体は夫婦と変わりません。そのため、内縁が解消されたときは、離婚に準じて財産分与の請求が認められます。

では、内縁の当事者である財産分与義務者が死亡した場合、その義務は相続人に引き継がれるのでしょうか。

引き継がれると、例えば先妻との間に生まれていた子たちが義務を相続するので、内縁関係にあった奥さんから財産分与の請求があると、応じなければなりません。

財産分与義務が相続されるかどうかは、内縁解消の原因が何かによって、大きく違ってきます。

まず、死亡による内縁解消ですが、この場合は内縁配偶者には財産分与請求権が生じないので、その義務が相続人に引き継がれることもありません。(最高裁平成12年3月10日第一小決定・判例時報1716号60頁)

次に、内縁の解消後に財産分与義務者が死亡した場合ですが、当事者の一方が財産分与請求の調停を申立て、その審判手続き中に相手方が死亡した事件で、裁判所は「財産分与請求権は既に発生しているから、その義務は相続される。」と判断しています。(大阪高裁平成23年11月15日決定・判例時報2154号75頁)


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