ハラスメント対策相談窓口の義務化が決まりました。
この記事を書いたのは:木下敏秀
昨今の労働関係法制の整備により全ての事業主はハラスメントの相談窓口の体制が必須になります。
1 相談窓口の義務化
① セクハラ、マタハラの相談窓口の法令根拠
男女雇用機会均等法第11条、第11の2では、事業主に対し、セクシュアルハラスメント、妊娠等に関するハラスメント防止のための雇用管理上必要な措置を講じることを義務づけています。事業主が措置義務を果たしていない場合には、厚生労働大臣による指導や勧告等の対象となります。
事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針の中には「相談窓口」を設置することが規定されています。
➁ パワハラの相談窓口の法令根拠
改正労働施策総合推進法第30条の2では、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります(中小企業については2022年4月)。上記と同様に事業主が措置義務を講じていない場合には厚生労働大臣による指導や勧告等の対象となります。
事業主が職場におけるパワーハラスメントの防止のために講ずべき措置の中には「相談窓口」を設置することが規定されています。
なお、中小企業の定義は中小企業庁のホームページに掲載されていますが、
(https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/teigi.html)
早期に対策を講じることが望ましいです。
2 ハラスメント問題の事業主の責任
① 事業主は、職場環境配慮義務(労働契約法第5条など)、使用者責任(民法第715条)を負担しており、ハラスメント問題に対して賠償責任を負うことがあります。その責任によって被害者に対して「治療費」「休業補償」「慰謝料」「逸失利益」の損害賠償負担が発生する事例もあります。
【高額事例】
岡山セクハラ事件では退職後の1年分を含めて1528万9320円もの賠償が命じた裁判例があります(岡山地方裁判所平成14年5月15日・労働判例832号54頁)
➁ 事業主のハラスメント対応が不十分な場合には、事業主には上記の損害賠償とは「別の賠償責任」を負うこともあります。
【裁判事例】
女性社員からのセクハラ被害申告があったが、事業主が簡単な事情聴取をして、加害者である同僚に対して「誤解を受けるような行為はやめるように」と注意しただけに留まったことは違法な対応であるとして、事業主に対し、30万円の損害賠償の支払いを命じた裁判例があります(大阪地方裁判所平成21年10月16日判決・ジュリスト1391号80頁)
3 弁護士による外部相談窓口のメリット
① 企業価値の上昇
ハラスメント対策に積極的な事業主の姿勢は従業員、取引先、消費者等に対する信用性が高まり、企業価値の上昇になります。
➁ 紛争の予防措置
社内窓口の場合には上司・同僚への遠慮、匿名性の確保への懸念からハラスメンや違法行為が埋もれてしまう可能性があります。弁護士の外部窓口が存在することは管理職、上司の法令順守の意識が高まるとともにハラスメント問題が拡大化する前に予防できることもあります。
③ トータルコストの削減
社内窓口の設置・対応のために従業員を雇用した場合、新たな人件費が発生する上、スキル向上のための時間も必要となります。専門家である弁護士による外部窓口を設置することがトータルコストの削減にもなります。
4 外部窓口の必要
① 初期導入費用 10から15万円(消費税別)
窓口規程の作成、社内体制の確認・整備、ホームページを利用するなどした法令順守の宣言の作成など
就業規則の改訂などで社会保険労務士が必要な場合にはご紹介をさせて頂きます。
➁ 継続費用 従業員数に応じて設定します。
従業員1から50人まで
月額1万円(消費税別)
従業員50人から100人まで
月額2万円(消費税別)
従業員100人以上
月額3万円(消費税別)
③ 詳細な調査 別途の協議をします
※個別対応としてハラスメントの事実関係の調査が必要な場合には別途事案に応じた調査費用を協議させて頂きます。
ハラスメント対策パンフレット・リーフレット