「カスタマーハラスメント」にご注意ください

この記事を書いたのは:戸田裕三

 企業・店舗のあらゆる現場において、近年深刻化しているのが「カスタマーハラスメント(カスハラ)」です。
 カスハラとは、顧客が事業者に対し、社会通念上許容される範囲を超えた要求や言動を行い、従業員に精神的・身体的苦痛を与える行為を指します。

 「お客様だから正しい」
 「お客様が怒っているなら対応すべき」

 このような考えが根強い現場では、従業員が過度な負担を抱え、離職につながることも珍しくありません。近年では、飲食・小売だけでなく、医療・介護・金融・行政窓口など、あらゆる業種でカスハラが顕在化しています。

 カスタマーハラスメントは、状況により次のような法的責任が発生します。

刑事責任

  • 暴言・威迫:脅迫罪
  • 土下座の強要:強要罪
  • 暴行・物損:暴行罪・器物損壊罪
  • 長時間の拘束:威力業務妨害罪

民事責任

  • 従業員の精神的苦痛:慰謝料請求
  • 業務妨害による損害:損害賠償請求
  • SNSでの虚偽投稿:名誉毀損による賠償責任

顧客の地位を濫用した不当要求は、法的に「保護される苦情」ではありません。

企業が取るべき対応策としては次のようなことが考えられます。

1. カスハラ対応方針・マニュアルの策定

 従業員が判断に迷わないよう、以下の点を明確にしましょう。

  • 対応を控えるべきカスハラ行為
  • 対応打ち切りの基準
  • 警察・弁護士への連絡基準

2. 証拠の確保の体制

 録音、メール、チャット、カメラ映像など、事実を裏付ける証拠を残すことが極めて重要です。

3. 複数人対応・責任者対応の徹底

 従業員を一人で矢面に立たせない体制づくりが、心理的安全の確保につながります。カスタマーハラスメントから従業員を守る体制を取らない場合には、従業員から企業が訴えられる可能性も発生します。一人で対応を続けるとカスタマーハラスメントによる心的悪化で労災となる可能性もあります。

4. 悪質なケースでは下記のような毅然とした対応を検討しましょう。

  • 警告書
  • 内容証明郵便
  • 出入り禁止措置
  • 警察相談(生活安全課)
  • 損害賠償請求

5. 従業員ケア・相談窓口の設置

 カウンセリング体制・相談窓口の整備は、離職防止に大きく寄与します。

6 以上のような体制を事前に検討しておき、いざというときに後手に回らないように準備しておくことが大切と思われます。


この記事を書いたのは:
戸田裕三