兄弟姉妹間の扶養をめぐる珍しい裁判事例
この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)
長男(昭和23年生)高給取り
長女(昭和24年生)困窮状態
次女(昭和26年生)年金生活者
三女(昭和30年生)一定収入あり
両親は既に亡くなっており、困窮している長女には、夫や子はいない。長女は、うつ病等のため無収入であり、困窮している。
長らく、三女が長女に経済的な援助をして扶養をしていたが、三女には一定の収入はあるものの、多額の借金を抱えており、これ以上扶養する余力がなかった。次女は、年金生活者で、同様に長女を扶養する余力がなかった。
他方、長男は、会社社長を務めており、扶養する余力が十分にあった。
そこで、長女と三女が、長男は長女に対して扶養料を支払うべきである、長男は三女に対して、三女が過去に支払った扶養料を支払うべきである、として、裁判所で争われた事件がありました。
兄弟姉妹間の扶養義務は、夫婦間及び親子間などと異なり、余力がある限りで(自己の生活を犠牲にすることがない程度に)、困窮する者を扶養する義務であるとされています。また、扶養能力を有する同順位の扶養義務者が複数いる場合は、その余力に応じて負担を定めることになります。
裁判所は、
長男には長女を扶養する十分な余力があり、他方、他の兄弟姉妹にはその余力がないとした上で、
①長男は長女に対して、毎月8万円の扶養料を支払うこと、
②長男は三女に対して、これまで三女が長女を扶養するために支払った金員の半額である112万円を支払うこと、
をそれぞれ命じました。
@東京高裁平成28年10月17日決定(家庭の法と裁判2018年12月号・75頁)
兄弟姉妹間の扶養を巡る裁判は珍しいです。というのは、扶養を求めるというよりも、生活保護などのセーフティーネットを利用するのが一般的だからです。推測でしかありませんが、長い間、三女が扶養してきたという実績があったため、生活保護を申請しても、福祉事務所から引き続き三女に扶養してもらうようにいわれて生活保護を受給できなかったのではないかと推測しています。
この記事を書いたのは:
旭合同法律事務所(名古屋)