労働問題

ハラスメント対策!弁護士×社労士 対談

対談者 

旭合同法律事務所

木下 敏秀(きのした としひで)

弁護士

広島県出身。創価大学卒業。平成6年旭合同法律事務所入所。

公益内部通報制度の制度設計、コンプライアンス委員会の委員長、保育園の第三者委員に携わる。通勤災害・労働災害事件、ハラスメント問題の裁判案件も多数担当し、労災・労働問題に精通している。過去に担当した労働事件が大手新聞のトップ記事で掲載される。マスコミへの法律解釈に関するコメント出演あり。

旭合同法律事務所

福島 宏美(ふくしま ひろみ)

弁護士

広島県出身。広島修道大学卒業。平成27年旭合同法律事務所入所。

女性のための離婚、親子関係の裁判案件を多数担当し、女性に寄り添う姿勢で依頼者・関係機関から高い評価を得ている。ADR(裁判外紛争解決手続)による離婚事件等の先進的な紛争解決にも携わる。NPO法人が主催する子供支援のボラティア相談員を担当。シングルマザーのための情報サイト「シンママstyle」にて取材記事を掲載。ラジオ番組への出演経験もあり。趣味は絵本づくり。

社会保険労務士法人愛知労務

松井 宝史(まつい たかし)

社会保険労務士 南山大学文学部卒業。地元の中小企業の総務部、保険代理店などを経て、平成9年社会保険労務士事務所開設。ハラスメントセミナー講師も務める。現在、豊川市において社会保険労務士法人愛知労務の代表社員として年金手続き、労災保険手続き、各種助成金申請などを手掛けております。

社会保険労務士法人愛知労務

宮本 麻由美(みやもと まゆみ)

社会保険労務士

防衛庁支部にて預金関係仕事。税理士事務所勤務。平成15年社労士登録

社会保険労務士法人愛知労務 役員として全国の労災申請・障害・遺族年金手続き、損害保険会社等に労災事故の講師。労災申請は、全国労働基準監督署に障害認定に同行しています。今まで出張した労働基準監督署.北は苫小牧労働基準監督署・宮古労働基準監督署等・南は大分・宮崎労働基準監督署等

対談内容

【木下】

 昨今の労働関係法制の整備により企業のハラスメント対策は非常に重要になっています。企業のハラスメント対策はどのように準備をすればいいのか、悩むことが多いと思います。そこで、厚生労働省の推奨する取組内容について、今回は、大まかな概要とポイントについて対談をしたと思います。

【松井】

 厚生労働省は以下のような「7つの取り組み」の実施を推奨しています。具体的な流れを説明します。

<予防するために>

 ① トップのメッセージ

 組織のトップが職場のハラスメントは職場からなくすべきであることを明確に示す。

 ➁ ルールを決める

  ・就業規則に関係規定を設ける、労使協定を締結する。

  ・予防・解決についての方針やガイドラインを作成する。

 ③ 実態を把握する

   従業員アンケートを実施する。

 ④ 教育する

   研修を実施する

 ⑤ 周知する

   組織の方針や取組について周知・啓発を実施する。

 <解決するために>

 ⑥ 相談や解決の場を設置する。

  ・企業内・外に相談窓口を設置する、職場の対応責任者を決める。

  ・外部専門家と連携する。

 ⑦ 再発防止のための取組

   行為者に対する再発防止研修等を行う。

【木下】

  企業トップが主導的にハラスメント対策に動くことが重要ですよね。

宮本】

 企業のトップによる組織の方針が明確になれば、ハラスメントの当事者、周囲の関係者は 問題点の指摘や解消に関して申告・発言が容易になり、ハラスメント対策の取組の効果がより期待できます。企業のトップが人任せにすると従業員は不安や報復などの萎縮によってハラスメント対策の効果が期待できないおそれもありますね。

木下】

  企業はどのようなルール作りをしたら良いでしょうか。

福島】

  私からはハラスメント対策のルール作りの説明をします。

(その1)

 企業の「就業規則」や「服務規律」等を定めた文書で、ハラスメント行為を行った当事者について、懲戒規定等に基づき厳正に対処する旨を規定してルールとします。

また、ハラスメント防止について詳細な規定を定める場合は、就業規則に委任の根拠規定を設けて、ハラスメント防止規程を定めることも望ましいと思います。

(その2)

 企業のハラスメント防止について、労使の間で「労使協定」を締結し、労使で協力し てルール作りをする方法もあります。

木下】

 従業員アンケートのポイントを説明して頂けますか。

松井】

  厚生労働省では以下の4つのポイントを指摘しています。

① アンケートでの実態把握は、対象者が偏ることがないようにする。

➁ より正確な実態把握や回収率向上のために、匿名で実施するのが効果的です。

③  従業員向けの相談窓口を設置している場合は、アンケートと合わせて必ず相談窓口を紹介します。

④ アンケート以外の方法として、安全管理者や産業医へヒアリングしたり、評価面接 など個人面談の際に自己申告項目に入れるなど、複数の方法で行うことも有効です。

木下】

 なるほど。研修のポイントはどうでしょうか。

宮本】

 研修のポイントは主に3点です。

① 教育のための研修は、可能な限り全員が受講し、かつ定期的に実施することが重要です。中途入社の従業員にも入社時に研修や説明を行うなど、漏れなく、全員が受講できるようにします。

管理監督者と一般従業員に分けた階層別研修の実施が効果的です。ただし、企業 規模が小さいなどの場合は、管理監督者と一般従業員が一緒に研修を受講してもよい。

研修内容には、トップのメッセージ内容を含めるとともに、会社のルールの内容、 取組の内容や具体的な事例を加えると効果的です。

木下】

 ハラスメント対応の周知の方法としてはどのような方法がありますか。

福島】

 色々な周知の方法が考えれます。実例を紹介します。

(その1)

「人事部門・組織長による説明会の実施」

 トップのメッセージ発信を受けて、具体的な会社の取組を、人事部門や組織長か説明を行います。その際には、周知効果を高めるための工夫が必要です。

 例えば、ハラスメントの定義、具体的な例などを盛り込む、ハラスメントが発生することによるデメリットを伝えると良いでしょう (組織の停滞、従業員相互間の不信感の増大、人材の流出、業績への影響など)

(その2)

「相談窓口の案内」

 相談窓口に関して、相談窓口の利用方法、相談者のプライバシーが守られ安心して相談できる窓口であることをポスター等で掲示して周知をします。さらに、従業員の意識を高め、窓口の存在や取組を周知するため、携帯用カードを配布する方法も良いと思います。

木下】

 企業のハラスメント問題への相談対応の流れを簡単に教えて頂けますか。

松井】

 企業の相談対応の大まかな流れは以下の通りになります。

 1)相談窓口(一次対応)

 2)事実関係の確認

 3)とるべき措置の検討

 4)行為者・相談者へのフォロー

 5)再発防止策の検討

【木下】

 再発防止策の具体例が知りたいですね。どのような具体例がありますか。

宮本】

 企業の個別事情によって違うとは思いますが、いくつかの例を紹介します。

(その1)

 「行為者に対する再発防止研修の実施」

 ハラスメント行為の当事者に再発防止の研修を実施する。当事者の立場、プライバシーに配慮することも重要です。社内で対象者を集めての研修は、お互い顔を合わせることになるので、避けるのが望ましいです。外部のハラスメントセミナーなどに参加してもらい、レポート提出などをさせる方法もあります。

(その2)

「事例の活用」

  企業内の事例ごとに検証し、新たな防止策を検討し、毎年のトップメッセージや会社ルール、 研修などの見直し・改善に役立てる方法があります。プライバシーに配慮しつつ、再発防止の目的で、社内の主要な会議で情報共有する方法もあります。

(その3)

「管理職登用の条件」

 管理職登用にあたり、部下とのコミュニケーションの取り方や部下への適正な指導や人材育成にあたれる人材かどうかを昇格の条件とすることも考えられます。

(その4)

「職場環境の改善のための取組」

  ハラスメント行為の防止に当たり、職場環境の改善のための取組を行います。ハラスメントが起きてしまう要因には、人間関係の希薄化、長時間労働の恒久化が考えられます。職場内の長時間労働対策を行うなど、職場環境を改善することがハラスメントの予防にもなると思います。

木下】

 ハラスメント対策は長期的かつ継続的に実施するのが重要です。ハラスメント対策に積極的に取り組むことは従業員、取引先、消費者の信用を得て、企業価値自体が向上することにもなります。外部専門家の助言・協力を得ることも有用です。当事務所にも気軽にご相談下さい。


この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)

愛知県名古屋市にある法律事務所です。

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