離婚と年金分割

この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)

厚生労働省の発表によりますと、平成14年の離婚件数は、28万9836件だそうで、およそ1分49秒に1組の夫婦が離婚していることになります。

ところで、平成16年に年金改革関連法が成立しましたが、この中で、離婚した場合の年金の分割制度が成立しました。

この制度によって特に関係があるのが、会社員の妻で、かつ、専業主婦をしている女性です(いわゆる、厚生労働省か想定している「モデル世帯」です。)。
なお、公務員の夫と専業主婦の妻という夫婦の場合も同じですが、ここでは会社員の例でお話を進めます。

これまでは、このようなモデル世帯が離婚に至った場合、年金をもらう権利は各個人のものとされていたため、離婚すれぱ、妻は基礎年金(国民年金)しかもらうことが出来ませんでした。

しかし、この基礎年金の受給額は少なくこれだけで老後を暮らしていくことは非常に困難な状態でした。

これに対し、会社員である夫は、国民年金だけでなく、給料と加入期間の長さで決まる厚生年金を受給することができます。そのため、どうしても離婚した妻と夫との年金受給額に大きな格差が生じてしまうという問題がありました。

そもそも、婚姻時代において、夫が頑張って働いて給料を稼ぎ、それによって厚生年金保険料(頑張って給料が上がれば上がるほど、厚生年金保険料は高くなりますが、受給額も高くなります)を支払うことができたのも、妻のサポートがあったからこそですし、反面、妻が専業主婦になったのも夫へのサポートや子育てが理由となっていることが多いことからすれぱ、離婚をすれぱその厚生年金を夫がすべてもらうというのは不公平です。

そこで、今回の法改正では、結婚している間に夫が支払った厚生年金保険料は夫婦が共同して負担したものと考え、夫婦が離婚した場合、社会保険事務所に届ければ、夫の厚生年金を分割して妻に分けるという制度が設けられました。

もっとも、どのような割合で分割するのかは夫婦間で合意をした上で杜会保険事務所へ届け出ることが必要となっており、分割割合の合意が成立しない場合は、裁判所で決着をつけるという仕組みとなるようです。ただ、分割を受ける側の取り分は、最大で半分です。

これに加えて、平成20年4月以降において奥様が専業主婦をしていた期間(平成20年4月以降の第3号被保険者期間)分の夫の厚生年金については、離婚をすれば夫の厚生年金が夫と妻に自動的に2分の1に分割されることが決まりました。

社会保険事務所への届け出は必要です。

こういうサーピスが出来ると、分割される年金額の情報を事前に入手して、離婚をするかどうかの判断材料とする夫婦が現れることになるでしょう。また、弁護士が離婚の相談を受けたとき、離婚の損得を考える上で、年金の問題は避けられなくなると思います。


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旭合同法律事務所(名古屋)