賠償請求権放棄の市議会決議の適法性
この記事を書いたのは:川口 正広
某市が浄水場用地を購入したところ、その住民から購入価格が高額に過ぎるとして、売買契約当時の元首長に対して損害賠償請求をすることの義務づけ求める住民訴訟が提起された。
第1審(地裁)は、約1億5000万円くらい高過ぎるとして、住民側勝訴。
その後、市議会が、元首長に対する損害賠償請求を放棄する旨の議決をして、首町が放棄の意思表示をした。
第2審(高裁)では、この市議会の議決は無効であるとして、再び、住民側勝訴。
そして、最高裁。
結論:破棄・差し戻し。
つまり、これまでの審理は問題があるから、審理をやり直せ、ということ。
今回の市議会の議決が有効かどうかは、①公金支出等の性質、内容、経緯や影響、②議決の趣旨や経緯、③賠償請求権の放棄や行使の影響、④住民訴訟の係属の有無や経緯、⑤事後の状況、などいろんな事情を考慮して判断すべき、としました。
要するに、もっと慎重にいろんな事情を検討した上で判断するべきで、簡単に市議会の議決は無効などと判断しちゃダメよ、というものでした。
検討すべき事情を数多く列挙したのは、今後、市議会にも、こういういろんな事情を検討した上で議決をしないとダメだよ、と注意を喚起したものとも言えますね。
@最高裁平成24年4月23日判決(判時2168号49頁)
この記事を書いたのは:
川口 正広