相続法改正の分かりやすい解説(第3回)
この記事を書いたのは:木下敏秀
相続法改正について最後の第3回は、「自筆証書遺言のルール変更」「自筆証書遺言の保管制度の創設」「遺留分減殺請求の制度変更」について解説を致します。過去の解説と同じく改正のポイントを法務省の資料に基づいて解説します。
1 自筆証書遺言のルール変更
昨今の「終活ブーム」や「エンディングノートの流行」もあって、自筆証書遺言に対する意識の高まりがあります。しかし、改正前の相続法では、自筆証書遺言の作成は「全文」を「自筆」する必要があり、高齢者には負担が大きいとの意見が多いものでした。特に、遺産となる財産が多く、法定相続人に対して細かく分割方法を指定したい場合には負担が大きすぎる傾向がありました。
そこで、相続法の改正によって、財産目録はパソコン等で作成してもよく、土地について登記事項証明書を財産目録として添付することや預貯金について通帳の写しを添付することも可能となりました。ただし、自書によらない記載の用紙に署名押印が必要となりますので、この点は注意して下さい。印鑑は、特別な定めはありませんので,本文で用いる印鑑とは異なる印鑑を用いても大丈夫です。
2 自筆証書遺言の保管制度の創設
自筆証書遺言のデメリットとして問題視されていたのは、遺言者が遺言書を紛失したり、相続人が遺言書を破棄・隠匿するリスクがあること等の点でした。このような問題を防止するため、公的機関である法務局による自筆証書遺言の保管制度を創設しました。この保管制度は、家庭裁判所による検認が不要となるため、相続登記や預金の解約手続等が早期に実施できる利点もあります。
3 遺留分制度の制度変更
本来、被相続人は遺産を自由に贈与や遺贈ができますが、この自由な処分に一定の制限を加えた制度が「遺留分制度」です。遺留分とは、一定の相続人のために法律上必ず留保される遺産の一定割合をいいます。
改正前の相続法では、遺留分減殺請求権は、物権的効果が発生するとされ、遺贈又は贈与の目的財産が特定物である場合には、侵害の限度で失効し、遺留分権利者に権利が帰属します。例えば、不動産が遺贈された場合には、その不動産は遺留分の侵害の割合に応じて共有不動産になります。共有不動産となることは権利関係が複雑化すること、根本的な解決にならないこと、事業承継の支障になること等のデメリットがあります。
そこで、相続法の改正によって、遺留分制度から生ずる権利を金銭債権に一本化する制度に変更されました。