建築紛争-不良住宅

この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)

Q 自宅(建物)を新築しましたが、窓や戸の閉まりが不良です。建築葉者に対して補修の請求はできるでしょうか?
A 建築した建物に暇庇がある場合、建築業者に補修を請求することができます。また、補修請求の代わりに「瑕疵」(かし)を補修するのに必要な費用を請求することも出来ます。
Q その「瑕疵」とはどうやって判断するのでしょうか?
A 「瑕疵」とは一般的には「欠陥」「不具合」「クレーム」等の言葉で表現されていますが、何が「瑕疵」になるのかは非常に判断が困難です。

問題なく、瑕疵と認定できる場合としては、

1.関係法規に違反している設計・工事
2.設計図と相違している工事
3.契約内容に違反している工事です。

住宅金融公庫を利用している契約では、公庫使用基準が契約内容になるので公庫使用基準に違反していれば瑕疵となるでしょう。
また、鉄筋コンクリート造及ぴ鉄骨造の契約では、建築学会の使用基準が建築確認許可の判断基準になるので建築学会の使用基準に違反すれば瑕疵となるでしょうね。

Q ひどい欠陥建物の場合、契約を解除して新しく建築し直してもらえますか?
A 気持ちは分かりますが、残念ながら建築請負契約では欠陥を理由に契約解除はできないことになっています(民法635条但書)。
しかし、建物の瑕疵の程度が著しく、建物の建替しか補修方法がない場合、建替費用相当の損害賠債請求を認めた判例もいくつかあります(否定した判例もあります)。これらの判例の中には、建替費用のほか解体費用、仮住居費用、引越費用、鑑定調査費用、慰謝科、弁護士費用も損害として認めているケースもあります。
Q 建物の瑕疵を発見して一年経ちました。これから瑕疵の補修や損害賠債請求はできるでしょうか?
A 民法では、建物の瑕疵を追及できる期間(瑕疵担保期間といいます)を規定しており、木造建物では5年、鉄筋コンクリート造、鉄骨造の建物では10年と定めています。

しかし、瑕疵担保期間は契約書で短縮することができます(民法639条)。
現在、建築業者が多く使用する四会連合作成の工事請負契約約款では「瑕疵担保期間は建物引渡日から木造建物では1年、石造、金属造、コンクリート造及ぴこれに類する建物では2年」と定めてあります。契約書や保証書の瑕疵担保期間は、契約をするときに入念に確認しないといけませんね。

Q 全然知りませんでした。1年や2年はあっという間に過ぎますよ。では、建物の瑕疵を発見したらどう対処したらよいのでしょうか?
A 建物の瑕疵を発見したら瑕疵担保期間を経過する前に内容証明郵便で瑕疵の補修又は損害賠償請求をすべきです。
また、建築専門家に他に瑕疵がないかも調査してもらうと良いでしょう。なお、判例では、瑕疵担保期間を経過しても未払請負代金と損害賠償請求との相殺を認めていますから、未払請負代金がある場合は、諦める必要はありませんよ。
Q 建物建築工事の完成が何力月も遅れています。工事完成が遅れたことによる損害賠償請求はできますか?
A 工事完成が遅れた責任が建築業者にある場合は、損害賠償請求ができます。
ただ、先ほどお話しした四会連合作成の工事請負契約約款では「遅延日数1日につき、請負代金額から工事の出来高部分を控除した額の1000分の1に相当する額」を違約金と定めています。
この違約金の定めは、損害賠償の予定と考えられていますから(民法420条3項)、この約款が建築工事の契約内容になっている場合は、現実の損害額ではなく、原則としてこの違約金請求のみが可能となります。
Q 中古住宅を購入しましたが、雨漏りがしています。売主に瑕疵担保責任の追及はできますか?
A 中古住宅の売買において「隠れた瑕疵」があれぱ、瑕疵担保責任が発生します(民法570条)。
中古住宅の売買契約書では、「現状有姿」の条項が記入されているケースが多いと思われますが、この条項だけでは担保責任は免除されないと解釈されているようです。
なお、宅建業者が売主の場合には、無担保特約自体が無効となります(宅建業法40条1項・2項)。
Q 建設工事紛争審査会という機関があると聞きましたが、どのような機関ですか?
A これは、弁護士等の法律専門家、建築士等の建築技術の専門家が主体となって建設工事紛争の解決を行う機関です。各都道府県に設置されています。
Q 建築のことは何でも解決してくれますか。
A いいえ。同審査会の取扱事件は限定されています。
まず、請負契約の当事者のみを対象とするので、下請や孫請の業者を相手方とすることは出来ません。
また、請負契約を対象とするので、「建売住宅の瑕疵問題」「設計に関する紛争」「日照、騒音等に関する第三者との建築紛争」は取扱事件となりません。

この記事を書いたのは:
旭合同法律事務所(名古屋)