ネットの検索のデマを消したい
この記事を書いたのは:木下敏秀
「忘れられる権利」
ネットの検索ではデマも含めて多くのプライバシー情報が残って、削除して欲しいとの要望も少なくありません。
これを「忘れられる権利」として主張されはじめています。
検索サイトのグーグルとヤフーの裁判では判断が分かれています。
この裁判の愛媛新聞の報道が興味深いです。
以下で紹介します。
「私たちが、消し去ることのできない記録をもつ『人類最初の世代』になる」(グーグルのシュミット会長)―。そんな覚悟と準備が必要な時代の「新たな人権」が注目を集めている。
インターネット上に残り続ける個人情報を一定時間経過後に削除するよう求める「忘れられる権利」。
ひとたび悪評や個人情報が拡散すれば回復、消去が極めて困難な現状において、個人のプライバシー権や名誉をどこまで守り、知る権利や表現の自由とどうバランスを取っていくのか。
日本としても早く基本原則を確立し、法整備を含めた対策を検討すべきだろう。
削除を巡っては近年、各地で裁判が起こされている。
2016年7月には、ネット検索サイト「グーグル」の検索結果から逮捕歴に関する記事削除を男性が求めた仮処分の保全抗告審で、昨年末のさいたま地裁決定を東京高裁が取り消した。
地裁決定は「忘れられる権利」を言葉として明示し、削除を認めた国内初の司法判断だったが、高裁は「法律で定められた権利ではなく要件や効果も明確ではない」などとして覆した。
先週は「ヤフー」に検索結果の削除を命じた東京地裁の仮処分決定を巡り、同社の「問題となる語句だけが削除対象」との異議を退け、別の裁判官がサイトアドレスなど「全内容削除」を命じた。
当然ながら権利の定義や削除の内容などで判断は割れ、見解は定まってはいない。
検索システムは有用性、公共性が高い。
政治家の不祥事や歴史の記録、性犯罪の前歴など、公益に関わる情報の安易な削除を認めることには努めて慎重かつ抑制的でなければならない。
その上で原則やルールの明確化を図り、リベンジポルノや流出・漏えい情報、デマなど保護の必要性が大きい場合は、裁判を起こさずとも迅速に救済判断を仰げる体制構築を急ぎたい。削除するだけでなく、元の記事に「無実と判明」「事件は不起訴」などと付け加える形の「救済」も、検討に値しよう。
「忘れられる権利」を初めて認めたのは、2014年の欧州連合(EU)司法裁判所。
判決後、統一ルールの策定が進み、グーグルは欧州限定で削除申請を受け付け、45万件の検索結果を消した。
他方、英BBC放送は「何が消されたか分からなければ議論できない」として非表示となった記事を再公開するなど、試行錯誤を重ねている。日本でも、議論を深め丁寧な社会的合意の形成に努めたい。
来春にも施行される改正個人情報保護法は、保護よりも「利活用」に傾く。
携帯位置情報や購買履歴などの「個人関連データ」を加工すれば、本人同意なしに第三者に提供することを認めた。
だが複数の情報を照合すれば特定は簡単で、実効性は不明。
個人情報の際限なき利用拡大に危惧を覚える。
「事後」では取り返しのつかない情報の守り方を、個人と企業、国がそれぞれに改めて考え直したい。