相続・遺言

遺言書の全文に斜線を引くのは遺言の撤回に当たる。

お父さんは、亡くなる16年ほど前に、罫線が印刷されている1枚の用紙に、自分が所有する不動産など遺産の大半を、2人いる子(長女と長男)のうち長男に相続させるという内容の遺言全文を記載し、日付と氏名も自分で書いてハンコを押しました。出来上がった遺言書を、封筒に入れて封をしておきました。

その後、お父さんは封筒の上を切って遺言書を取り出しました。
そして、遺言書の文面全体の左上から右下にかけて赤色ボールペンで1本の斜線を引きました。
お父さんは、赤色の斜線を引いた遺言書を再び封筒に入れると、封をしない状態で自分の金庫に入れて施錠しました。

時はめぐり、お父さんが亡くなった後に金庫から、問題の遺言書が発見されました。
長女は「遺言書を作成した者が全文に赤色の斜線を引くのは、故意に遺言書を破棄する行為であるから遺言は撤回されている。」と主張し、遺言無効確認を求める裁判を起こしました。

一審とニ審では、「元の文字を判読できる抹消は、破棄でなく変更ないし訂正として定められた形式を備えない限り、元の文字が効力をもつと解される。斜線が引かれた後も遺言書の各文字は判読可能な状態を維持しているから、遺言の破棄に当たらない。」との理由で、遺言は有効であると判断されて、長女の主張が退けられました。

最高裁は、「その行為の一般的な意味に照らし、その遺言書の全体を不要のものとする意思の表れとみるのが相当であるから、一部の抹消の場合と同様に判断することはできない。」として、遺言無効を確認する判決をし、長女の主張が認められました。
(最高裁第ニ小法廷平成27年11月20判決、家庭の法と裁判6号60ページ)


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