裁判官が訴えられた事件の背後に

この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)

平成23年8月、長野地方裁判所飯田支部で行われた民事訴訟の口頭弁論期日で、担当裁判官が、被告の男性に対し、「あなたの審理が終わらないので、上司から怒られている。私の将来に影響するかも知れない。」と発言しました。

男性は、屈辱や威圧感を受けたとして、国、長野地裁、担当裁判官を相手に慰謝料200万円の支払いを求める訴訟を起していました。

平成26年1月30日、長野地裁飯田支部でこの事件の判決があり、「個人的な事情を理由として、当事者の訴訟活動を制限する趣旨の発言をしたというほかない。」と指摘し、国が男性に3万円を支払うよう命じました。

慰謝料3万円が安いか高いかということより、民事訴訟で担当裁判官が「審理が終わらないので上司から怒られている」という点が問題です。

裁判官の独立を侵す上司による管理、しめつけの影が垣間見えるからです。

また、「私の将来に影響するかも知れない。」という点は、それ以上に問題です。

裁判官は、法と良心に基づいて紛争解決への判断を示すのが職責の筈です。

第一線の裁判官が、自分の将来への影響を気にしながら訴訟を指揮しているとすれば、これ以上の司法の危機はないと、危惧されます。


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旭合同法律事務所(名古屋)