実刑と執行猶予の狭間に揺れて

この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)

私が弁護を担当したAさんの刑事事件は、実に際どい事案でした。

Aさんは、10年前に飲酒運転と無免許運転で、執行猶予付きの有罪判決を受けた前歴があるので、免許を取った後も日ごろから慎重な運転を心がけ、この10年間は無事故・無違反です。

そのAさんが、今回は夜間の飲酒運転で、スマホに着信したメールを見ていて赤信号に気づかず、信号待ちで停止していた乗用車に追突、2名に怪我を負わせた上、飲酒運転が発覚するのが怖くて、事故現場から逃げました。

Aさんには実刑になる要素がそろい過ぎています。

最初に依頼した弁護士からも、実刑は避けられないと言われていました。

Aさんともども、被害者の家を探しながら訪問を重ねた結果、幸いにも、被害者の方にAさんの誠意ある謝罪を受け容れていただき、示談書と嘆願書を裁判所に提出できました。

また、母親も自分の生い立ちや現在の境遇を証言し、Aさんは車を処分し次に免許が取れるまで絶対に運転しない旨を裁判所に誓いました。

裁判所は、実刑と執行猶予の狭間で悩んだに違いありません。

その結果が、5年間の執行猶予とするが保護観察に付すという判決に表れました。

Aさんは刑務所に行かなくてもよくなりましたが、5年間は毎月2回くらいは保護司の所へ報告に行き、指導を受けながら社会内での更生を目指してスタートしました。


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旭合同法律事務所(名古屋)