養育費に関する民法改正

この記事を書いたのは:戸田裕三

 2024年(令和6年)5月に成立した改正民法により、養育費に関するルールが大幅に変わりました(2026年4月1日施行予定)。
 これまで「取り決めをしないまま離婚すると、後から請求するのが大変」だった状況を解消し、「子どもの権利」としての養育費を確実に守る仕組みが導入されます。主なポイントは以下の3点です。

「法定養育費」制度の新設

 これが最大の変更点です。令和8年4月1日以降の離婚であれば離婚時に養育費の具体的な金額を決めていなくても、暫定的に法律で定められた一定額(法定養育費)を当然に請求できるようになります。

• なぜ変わる?:これまでは、離婚時に話し合いがまとまらないと、裁判所の手続き(調停など)をしない限り1円も請求できないのが原則でした。


• どう変わる?:取り決めがなくても、離婚した日からすぐに請求が可能になります。金額は「子ども1人あたり月額2万円」です。これは当事者が養育費を決めるまでの暫定的なものであり、その後に当事者で間で金額を正式に決めればそれが合意額となります。


• 遡及請求も可能:離婚から時間が経ってから請求した場合でも、離婚時までさかのぼって支払いを求めることができます。

「先取特権(さきどりとっけん)」の付与

 養育費の支払いが滞った際、より強力に、かつスピーディーに差し押さえができるようになります。

  • 裁判なしで差し押さえ:これまでは、給与などを差し押さえるには「公正証書」や「裁判所の判決」が必要でした。
  • 新たなルール:父母の間で合意した「書面」があれば、裁判所を通さずとも、その書面を根拠に相手の財産を優先的に差し押さえる権利(先取特権)が認められます。
  • 上限額:この簡易的な手続きで差し押さえられる額には上限があり、「子ども1人あたり月額8万円まで」です。この制度は、令和8年4月1日以前の離婚にも適用されますが、この制度が利用できる対象になるのは令和8年4月1日以降に発生する養育費です。

財産開示・情報取得手続の強化

 「相手がどこで働いているか、いくら稼いでいるか分からない」という問題を解決するための仕組みも強化されます。

  • 約束した養育費が支払われない場合には、強制執行の申立手続において裁判所を通じて、銀行や役所、勤務先などから相手の収入や資産情報を取得しやすくなります。
  • 養育費を決める裁判手続において家庭裁判所は当事者に収入情報の開示を求めることが出来ます。

この記事を書いたのは:
戸田裕三