不倫相手の子供との親子関係を断ち切る方法

この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)

真面目ひとすじの一郎さんは、3年間の海外滞在を終えて帰国しました。

ところが、その間に奥さんが他の男性と不倫していたことが分かったので、一郎さんは奥さんを許せず離婚しました。

離婚して半年後に、別れた奥さんが男の子を産みました。一郎さんは、自分の子ではないことが明らかなので放っておいたのですが、それから1年余り経って、元奥さんが、この子は一郎さんの子だと言って養育費を要求してきました。

一郎さんは養育費を支払わなければいけないのでしょうか?

別れた奥さんの子どもは、離婚して半年後に生まれていますから、法律上は一郎さんと元奥さんの子(嫡出子)と推定されます。

父子関係を否定してこの推定を覆すには、「嫡出否認の訴え」によりますが、この訴えは、子の出生を知ってから1年以内に提起しなければいけません。
一郎さんの場合は既に1年余り経過しているので、この訴えを起こすことができなくなっています。

ところで、嫡出推定という民法の規定は、夫婦が通常の共同生活を過ごしている場合、妻から生まれた子は夫の子と推定しても不自然ではないことを前提にしています。
ですから、この前提を欠いて、夫婦が事実上の離婚状態とか夫の服役、行方不明、海外滞在などで、夫婦関係が途絶していた場合は、嫡出推定がはたらかないことを判例も認めています。

このように嫡出推定がおよばない子との父子関係を否定するには、「親子関係不存在確認の訴え」という方法があります。
この訴えは、嫡出否認の訴えと違い、訴えを起こすのに期限の制限はありません。
この訴えの手順として、一郎さんは子を相手として、まず、家庭裁判所に親子関係不存在確認の調停を申し立てます。
そこで合意が成立しないときは、次に家庭裁判所に親子関係不存在確認の訴えを提起します。

元奥さんが産んだ子が一郎さんの戸籍に嫡出子として記載されている場合は、家庭裁判所での審判書か判決書の謄本を添付して、市町村役場に戸籍の訂正を届け出ます。ここまでの手続きが終われば、元奥さんの産んだ子は法律上も一郎さんの子ではありません。したがって一郎さんは養育費の支払い義務がありません。


この記事を書いたのは:
旭合同法律事務所(名古屋)