裁判所の交通事故慰謝料の考え方

この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)

交通事故慰謝料の考え方

交通事故裁判では慰謝料の金額が問題となりますが、近時の裁判所の考え方は方は概ね以下の通りです。
1、 死亡慰謝料
死亡1人につき総額2000万円~2700万円とする。一家の支柱は総額2700万円とするが、ケースにより総額2900万円までは認められる。
2、 傷害慰謝料
原則入院通院期間を基礎として裁判所作成の表(青本の中間値より概ね少し高い)により決定する(傷害の部位・程度により適宜増減することがある)。特に重症の場合は、表の金額に2割~3割を加算することもある。
3、 後遺症慰謝料
1級2800万円 2級2370万円 3級1990万円 4級1670万円 5級1400万円 6級1180万円 7級1000万円 8級830万円 9級690万円 10級550万円 11級420万円 12級290万円 13級180万円 14級110万円
14級に至らない後遺症も、それに応じた後遺症慰謝料を認めることができる。

入院雑費・交通費・葬儀費用などの問題点

治療費や付添費以外でよく問題になる点について以下のような基準で判断されます。
1、 入院雑費
一日につき定額1500円(最近の事故の場合)で計算するが、入院が90日を超えると適宜減額する。1500円には、日曜雑貨品、栄養費、洗濯代、新聞代、家族の交通費、通信費が含まれる。
2、 通院交通費
入院退院、通院の交通費は実費(公共交通機関またはガソリン代)が対象となる。タクシー代の請求が認められるのは、傷害の程度や交通の便から相当性が認められるときに限られる。
3、 装具・器具代
障害の程度から、必要相当と思われる部分は認められる。将来の買い替えが必要な場合は買い替え費用も認められる(中間利息は控除する)。
4、 家屋改造費
障害の程度から、必要相当と思われる部分は認められる。
5、 葬式費用
原則として150万円までを限度とする。

交通事故事件で請求できる治療費の考え方

交通事故の裁判でよく治療費について争われることがありますが、実際の裁判では概ね以下のように考えられています。
1、 症状固定後の治療費
原則としては認められませんが、症状の内容・程度に照らして、必要かつ相当なものは認められます。
2、 温泉治療費
医師が療養上必要と認め、その指導の下に医療機関の付属療養所またはこれに準ずる施設での治療のために必要かつ相当な額は認められます。
3、 あんま・はり・マッサージ
原則として医師の指示があり、治療のために必要かつ相当な額は認められます。
4、 室料差額
治療のために必要かつ相当な額は認められます。

付添看護費の問題点

交通事故の裁判でよく付添看護費について争われることがありますが、実際の裁判では概ね以下のように考えられています。
1、 原則
付き添い費用は医師が付き添いを認めた場合に認める。
2、 入院付き添い費用
職業付添人の費用は、必要かつ相当な実費額を認める。近親者付添の場合は、1日6300円の割合で認める(金額は最近の事故の場合)。
3、 通院付添費
1日2500円~3000円の割合で認める(金額は最近の事故の場合)。
4、 将来の付添費
平均余命までの期間とする(将来分は利息を控除する)。
職業付添人の費用は、必要かつ相当な実費額を認める。近親者付添の場合は、常時介護は1日8000円の割合で認める(金額は最近の事故の場合)。それ以外の介護は、内容・必要性の程度に応じて相当な額とする。


この記事を書いたのは:
旭合同法律事務所(名古屋)