「押し買い」にご注意を - 悪質な訪問買取の実態と法的対処法
この記事を書いたのは:戸田裕三

近年、「押し買い」と呼ばれる悪質な訪問買取の被害が全国的に増えています。
押し買いとは、業者が突然自宅を訪れ、「不要な貴金属やブランド品を高く買い取ります」などと勧誘し、強引に契約を迫る行為を指します。

一見すると通常の買取に見えますが、実際には「断っても帰らない」「その場で査定を始める」「相場より極端に安く買い叩く」など、消費者を心理的に追い込むケースが多く見られます。
特に一人暮らしの高齢者を狙った被害が目立ち、消費者センターや弁護士会にも相談が相次いでいます。
私の相談を受けたケースです。

名古屋市内に住む80代の女性Aさんはチラシを見て不用品を買ってもらおうと思って業者に電話をしました。Aさんは来訪した業者に有名な酒や金のネックレスなどの商品を見せたところ、業者はすぐに「全部で77000円です」と言うだけで、一つ一つの金額の明細も言いませんでした。
Aさんはそんなに安いはずは無いと思いましたが、業者が大きな男性であったので怖くて何にも言えず出された書面にサインしてしまいました。業者は金をAさんに渡して明細書も渡さず商品を全部持って帰りました。後で調べたところ、提示された価格は相場の半分以下でした。
訪問買取を規制する「特定商取引法」のポイント
押し買いのような訪問買取は、特定商取引法で厳しく規制されています。
主なポイントは以下のとおりです。
業者は訪問時に
①事業者名・担当者名
②勧誘の目的
③消費者が売却を拒否できる旨
を明確に告げなければなりません。
• 消費者が「売らない」と伝えた場合、業者は直ちに退去する義務があります。
• 契約書面を受け取った日から8日以内であれば、理由を問わずクーリング・オフが可能です。
• クーリング・オフにより契約は初めからなかったこととなり、業者は受け取った品物を返還しなければなりません。
なお、クーリング・オフ期間が過ぎてしまっても、業者の違法な勧誘や威迫行為があった場合には、消費者契約法に基づく取り消しが認められることもあります。
被害に遭わないためのポイント
1.玄関を開けずに対応する。
ドア越しに「必要ありません」と明確に断りましょう。
2.「無料査定」「近所でキャンペーン中」などの甘い言葉に注意。
多くが契約誘導の入り口です。
3.契約書や領収書を必ず保管する。
後のクーリング・オフや証拠確保に重要です。


4.少しでも不審に感じたら、すぐに相談する。
消費生活センター(188)や弁護士に早めの相談を。
押し買いの被害は、「自分は大丈夫」と思っている方にも起こり得ます。
ビラには高額買取と書かれていても、実際に買取に来て貰うと、その値段で買い取ってくれない業者もいます。

また買取に際して各買取商品の明細を明らかにしない業者もいます。
悪質業者は、親切そうな言葉や世間話で信頼を得てから勧誘を始めるなど、心理的な手口に長けています。
しかし、法律の保護を受ければ、被害の回復は十分可能です。
訪問買取や押し買い被害に関するクーリング・オフ通知の作成、返還請求、損害賠償請求など、被害者の方の権利回復が可能です。
被害に遭ってしまった場合でも、諦める必要はありません。
一人で悩まず、早めに専門家にご相談ください。
