差額ベッド(特別療養環境室)の代金支払義務

この記事を書いたのは:旭合同法律事務所(名古屋)

大部屋が空いていないとのことで個室に入院させられましたが、個室の差額ベッド代はやはり払わないといけませんか、という相談がありました。

差額ベッドに関して触れている通達(保医発0624第3号)によると、差額ベッド代を請求してはいけない場合の具体例を挙げています。

①同意書がない場合(同意書に差額ベッド代の記載がない場合、患者側の署名がない場合、もこれに含みます)

②治療上の必要により個室に入院させた場合
これは、治療上の観点から大部屋では不都合である場合です。
例えば、病状が重篤であるため、感染症の危険があったり常時監視を要するなど大部屋での入院だと不都合な場合です。

③病棟管理の必要性等から個室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合
感染症に感染していて、他の患者への院内感染を防止するために個室に入院させる場合などです。

では、大部屋が空いていないので個室に入院させられた場合はどうなのでしょうか。

通達は直接的には触れていませんが、③に該当すると思われます。しかし、通達では③の「実質的に患者の選択によらない場合」に該当するか否かは医療機関において適宜判断すること、としており、医療機関にその判断を丸投げしているため、個室に入院した既成事実から患者が個室を選択した、と医療機関が主張することもあるように思われます。

ただ、少なくとも言えることは、同意書がないときは①に該当するので、そのときは差額ベッド代を支払う必要はありません。

ですから、大部屋がないということで個室に入院させられて、経済的に厳しいときは、同意書へのサインを保留するなどの対応を検討すべきだろうと思います。

一般的には、個室に入った以上は、同意があると見做されるように思われますが、通達は必ず患者側の同意書への署名を必要としていて、それがなければ差額ベッド代は請求できないと明示しています。

@参考ホームページ
埼玉県ホームページ
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0702/sagaku.html
千葉県ホームページ
https://www.pref.chiba.lg.jp/kenshidou/faq/491.html


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旭合同法律事務所(名古屋)