相続人のいない身寄りのないケース

身寄りのない人の面倒を見てきた時

近年、身寄りのない人という方が増えている気がします。そして、こうした身寄りのない人を親身になって助けてあげている人もおられます。それは、近所のご婦人であったり、お友達であったりします。まだまだ、日本には、こうした助け合いの精神が残っています。このように身寄りのない人を助けてあげている方は、遺産を受け取ることができるでしょうか?
遺産をもらえると期待して面倒を見てあげている訳ではないでしょうが、それでも遺産がどうなるのかについては気になるところです。
この身寄りのない人には、①相続人が存在しないケースと、②相続人は存在するが疎遠(絶縁)となっているケース、に分類できます。
これらを分けてご説明したいと思います。

相続人が存在しないとき

もし亡くなった人が遺言を残してくれていれば、それに従います。
でも遺言もなければ、どうなるでしょうか。
もし、あなたが亡くなった人の面倒を見てきた人であれば、家庭裁判所に対して、「相続財産管理人の選任申立」をすることをおすすめします。
相続財産管理人が選任されると、相続財産管理人は、遺産を現金化し、そして、負債があればまずはその支払いをします。
その上で、その後、相続人ではないけれども、故人と親しくて,面倒を見てきたような事情があれば、「特別縁故者」として相続財産管理人から遺産の全部又は一部を受け取ることができます。
特別縁故者とは、ざっくり言うと、文字通り、故人と特別の縁があった人、という意味ですね。
過去の裁判例を見ると、特別縁故者として認められた者としては,内縁の妻や同居人などが多いですが,民生委員や社会福祉法人,学校法人,宗教法人なども認められています。意外に認められやすいので、心当たりのある人は特別縁故者の請求をしたほうが良いですね。
そして、特別縁故者に遺産の一部が引き継がれてもなお財産が残るときは、最終的には国庫に帰属します。
確かに、この特別縁故者という制度によって、面倒を見てきた人はある程度報われますが、この制度を利用するのは時間も費用もかかってしまうので、やはり、遺言を作ってもらうのが、一番です。
面倒を見てあげているあなたに感謝の気持ちがあれば、遺言を書いてくれるはずです。
よく話し合ってみませんか。

相続人が存在するとき

この場合は、遺言がなければ、いくらあなたが身寄りのない人を手助けしてきたとしても、残念ながら、何も遺産を受け取ることはできません。
今まで全く音信不通だったどこかの相続人が遺産を取得してしまいます。
遺産をもらうために手助けしてきた訳ではないでしょうが、それでもこれは時として悲しい結果であることがあります。
こうならないためにも、是非、身寄りのない人(手助けしてあげている人)に、「遺言」を残してもらいましょう。
疎遠となっているどこかの相続人よりも、親身になっているあなたに財産を残したいと思うはずです。
言いにくいかもしれませんが、やはり大切なことなので、話し合いをするべきです。
また、遺言がないと、葬儀を誰がするのか、葬儀費用はどうするのか、部屋の片付けはどうするのか、そういうところからいきなり混乱することになります。相続人でないなら、こうしたことに何もしてあげることができなくなります。
普段、往来のないどこかの相続人では、すぐに動いてくれないでしょうし、また、亡くなられた人の気持ちに配慮した行動をとるとは思えません。
こうしたことも含めて、遺言書に書き残しておかないと本当に大変なことになります。
遺言がないと、周りの人が困ることになってしまう、そのことをよく話し合って下さい。
もし、どうしても言いにくいのでしたら、一度、弁護士へ相談して下さい。
身寄りのない人が遺言を残すことがどれほど大切なことかを、弁護士が丁寧にお話をさせていただきます。

特別縁故者の審判

近年では、相続人のいない身寄りのない高齢者の方が多くなっています。そのような高齢者の身の回りの世話、介護を好意によって行われた人には相続権自体はないので、高齢者が死亡されても遺産を相続することは本来できません。
すると、遺産は国庫に帰属することが建前です。
ただし、相続人不存在が確認できる場合には、相続財産管理人を選任を求めて、特別な縁故者として最終的に遺産の分与が認められるケースもあります。
旭合同法律事務所でも何度か特別縁故者のご相談をうけ、審判手続きも行っています。
身寄りのない高齢者が増加する社会情勢からすると今後も特別縁故者の審判は増えるかもしれません