示談の申し入れを断わりたい
示談に応じるのは自由意思です
示談は、一言で表せば、話し合いで紛争を終わりにすることです。
民事上の争いを裁判手続きによらず、当事者間の交渉や歩み寄りによって合意し、解決することです。
民法上は和解と呼ばれています。交通事故のほとんどは、示談で解決されています。
刑事事件でも示談という言葉がよく使われ、示談がまとまると「示談書」が作成されます。
この場合の示談は、加害者から被害者への金銭的償いをいくらの金額にするか、その支払いをいつまでに、どのような方法で実行するかを取り決めることを意味しています。金銭的償いの金額の取り決めですから、民事上の契約に違いありません。
そのため、示談交渉のテーブルにつくかどうかは、被害者であるあなたの自由です。断るのも自由ですし、交渉を始めるのも自由です。もちろん、加害者の弁護人から提示された示談金額を受け容れるかどうかも、被害者であるあなたの自由です。
加害者の弁護人としては、示談を成立させて、加害者の有利な情状証拠として示談書を提出し、できれば起訴されずに済む方向へ、起訴されたとしても刑が軽くなる方向への弁護活動として、被害者への示談を申し入れてきます。
ですから、被害者であるあなたが示談の申し入れを断っても、加害者が起訴された後に再び示談を申し入れてくることがあります。そんなとき、あなたに気持ちの余裕と時間的余裕があれば、あなた自身で対応できます。
しかし、そのような余裕がない場合や、示談交渉によって事件のことを思い出すのが嫌だという場合は、信頼できる弁護士に相談し、相手方弁護士との対応窓口をあなたの依頼弁護士に一本化し、交渉や断りの煩わしさから開放されることも必要です。
いずれにしても、示談の申し入れがあった場合、あなたの自由意思で、どのような方法でも選ぶことができます。
迅速に損害賠償を請求する
損害賠償命令と刑事和解
犯罪の被害者やご遺族の方々による加害者に対する損害賠償の請求について、刑事手続の成果を利用し、簡易でしかも迅速に解決するための制度があります。
その内容は、損害賠償命令と刑事和解という2種類の制度です。
どちらも、刑事の裁判手続に付随して、加害者から被害者への損害賠償を実現するための手続きです。
損害賠償命令
殺人や傷害などの故意による重大犯罪による被害者又はその相続人などは、刑事裁判所に対し、起訴されてから裁判の弁論が終わるまでの間に、被告人に対する損害賠償命令を申立てることができます。
この申立は、刑事裁判の起訴状に記載された犯罪事実に基づいて、その犯罪によって生じた損害の賠償を請求するものです。
申立を受けた刑事裁判所は、刑事事件の有罪判決があった後、この申立についての審理をそのまま担当します。
そして、刑事裁判の訴訟記録をこの審理でも取調べ、原則として4回以内の審理期日で審理を終わらせて、損害賠償命令の申立についての決定をします。
この決定に不服のある当事者は、2週間以内に異議を申し立てることができます。
異議申立があると、通常の民事の損害賠償請求手続きに移行しますが、民事の審理に必要な刑事裁判の訴訟記録が民事の裁判所へ送付されます。
異議申立がなく2週間を経過すると、この決定は確定判決と同様の効力が生まれます。
刑事和解
被告人と被害者又はご遺族の方々との間で、犯罪から生じた損害などにつて裁判外で和解(示談)が成立した場合には、刑事事件を審理している裁判所に申し立てると、その合意内容を公判調書に記載してもらうことができます。
この合意が公判調書に記載されると、裁判上の和解が成立したのと同じ効力が与えられます。
その合意が金銭の支払いを内容とするときは、被告人以外の者が支払いを保証する旨を約束していれば、そのことも公判調書への記載を求めることができます。
加害者に資力が無い場合の給付金
犯罪被害者等給付金の制度
犯罪被害者やその家族は、高額な医療費の負担や収入が途絶え経済的に困窮することが少なくありません。
このような被害者等に対し、国から犯罪被害者等給付金が一時金として支給される制度があります。
(1) 対象となる犯罪
日本国内(日本船舶内又は日本航空機内を含む)で行われた生命又は身体を害する罪(緊急避難・心身喪失・14歳未満者の行為を含む)。ただし、法令又は正当業務行為・正当防衛・過失による行為は含まれません。
(2) 対象となる被害
犯罪行為による死亡、遺族が受けた心身の被害、重傷病(療養期間1か月以上で入院3日以上のもの)、障害(負傷又は疾病が治ったとき<固定を含む>における障害で等級が1級から14級に当たる程度のもの)です。
(3) 給付を受けることができる者
犯罪被害者、犯罪行為により死亡した被害者の遺族で、日本国籍を有する者又は国内に住所を有する人です。
(4) 給付の種類と金額
① 遺族給付金 = 第一順位の遺族に給付され上限は2,964万5千円
② 重傷病給付金 = 重傷病を負った者に給付され上限は120万円
③ 障害給付金 = 傷害が残った者に給付され、等級により18万円から3,974万4千円の範囲
(5) 給付が受けられないか減額されるケース
親族間で行われた犯罪、被害の原因が被害者にもある場合、労災保険など公的給付や損害賠償を受けた場合は、給付されず又は減額されます。
(6) 申請手続き
申請者の住所地管轄する都道府県公安委員会に申請します。受付けは、住所地を管轄する警察署又は警察本部で行っています。
(7) 申請期限
犯罪行為による死亡、重傷病又は障害の発生を知った日から2年以内。又は死亡、重傷病、障害の発生した日から7年以内。
(8) 給付金の保護
この給付金を受ける権利の譲渡・付担保・差押は禁止。給付金は非課税。