- 離婚に伴い子の養育費を支払う合意をしました。税金はかかりますか?
- 養育費については支払う方にも受け取る方にも税金はかかりません。
- 離婚に伴い慰謝料を支払うことになりました。税金はかかりますか?
- 慰謝料については支払う方にも受け取る方にも税金はかかりません。
- 離婚に伴い財産分与として金銭を支払うこととなりました。税金はかかりますか?
- 金銭による財産分与については支払う方にも受け取る方にも税金はかかりません。
ただし、不相当に過大な金額ですと過大な部分について贈与とみなされる可能性はあります。 - 離婚に伴い不動産を財産分与することとなりました。税金はかかりますか?
- 受け取る方には通常の不動産譲受にかかる登録免許税や不動産取得税がかかるだけですが、
譲り渡す方には譲渡所得税がかかりますので注意が必要です。予想外の税金がかかったとして財産分与の無効を主張した裁判もありました。
不動産を財産分与する場合は居住用資産の譲渡に関する3000万円控除や
婚姻期間が20年を超える夫婦間の贈与に関する2000万円控除等も検討し、
税金も念頭にどれだけを財産分与するか決めた方がいいと思われます。
財産分与と税金
離婚により相手方から財産をもらった場合、通常、贈与税がかかることはありません。
これは、相手方から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたものと考えられるからです。
ただし、次のいずれかに当てはまる場合には贈与税がかかります。
1 分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合 この場合は、「その多過ぎる部分」に贈与税がかかることになります。
2 離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合
この場合は、離婚によってもらった「財産すべて」に贈与税がかかります。
離婚前の居住用不動産贈与と税金
配偶者に対して居住用の不動産を贈与する際は、配偶者控除があります。
そのため、離婚前に居住用不動産を贈与し、これについて贈与税の申告しておきますと、贈与税も譲渡所得税も課せられないで済むことがあります。
この配偶者控除制度の適用を受けることができるは、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用の不動産を贈与した場合です。
その内容は、課税価格から暦年課税の基礎控除110万円を含めて2,110万円の配偶者控除を認めるというものです。
課税価格は相続税の評価基準に従い、土地は路線価格を、建物は固定資産税評価額を基準にします。
もっとも、離婚直前になって、離婚を前提として贈与を行った場合は、実質的に離婚給付と同視しうるとして配偶者控除の適用はないと判断される可能性がありますから、注意が必要です。
離婚給付を受ける者には、財産分与であっても慰謝料であっても所得税は課されません。また、過度に高額なものでない限り贈与税も課せられません。
ただし、不動産を取得したときは不動産取得税(地方税法73条以下)、その所有権移転登記に際しては登録免許税がかかります。不動産取得税や登記時の登録免許税は、不動産の取得原因にかかわりなく課せられる税金です。
不動産分与者への課税
1 離婚に伴う財産分与として不動産の所有権を移転することがありますね。この場合、分与者について譲渡所得税の対象となります。所得税基本通達33-1の4は「財産分与として資産の移転があった場合には、その分与をした者は、分与をした時において時価により当該資産を譲渡したこととなる。」と定め、財産分与が譲渡所得の対象となることを明確にしています。
2 具体的な譲渡所得の計算は、分与時の時価(譲渡金額)から当該資産の取得費と譲渡費用の合計を差し引いた金額となります。そのため、不動産が購入時よりも値下がりしていれば課税されません。なお、分与時の時価が購入時よりも値上がりしている場合でも、分与者の居住の用に供している土地建物を、住まなくなって3年を経過する日の属する年の12月31日までに分与するときは、譲渡所得から最高3000万円までの特別控除(租税特別措置法35条1項)適用の余地があります。
3 ただし、この特別控除は、「配偶者その他その個人と特別な関係がある者」に対する譲渡には適用されません。ですから、先に離婚を成立させて、配偶者でなくなった後の2年以内(民法768条2項)に財産分与を行うべきです。そのため、この特別控除の適用を受けるには、協議離婚であれば公正証書に、調停離婚であれば調停調書に、「離婚成立を条件に、離婚に伴う財産分与として当該不動産を譲渡する。」と記載するなどの工夫が必要です。