離婚後こんな問題が発生した

氏を旧姓に戻したいとき。

離婚の際、旧姓に戻さずに離婚後も離婚の際に称していた氏(名字)を継続して名乗っているけれども、その後、やはり旧姓に戻したいという場合は、戻すことができるのでしょうか?

実は、当然に戻すことはできません。「やむを得ない事由」があるとして裁判所の許可が必要になります。しかも、「やむを得ない事由」というのは、氏の変更をしないとその人の社会生活において著しい支障が生じる場合をいうとされています。

そのため、簡単に氏を変更することはできず、それは旧姓に戻す場合も同様です。

したがって、離婚の際に旧姓に戻すのか、離婚後も離婚の際に称していた氏(名字)を継続して名乗るのかは、慎重に判断したほうがよいかもしれません。

氏の変更実例

鈴木さんは、夫と結婚して、夫の氏である山田になりました。
その後、夫とは離婚しましたが、婚氏続称の届出をして、引き続き山田を名乗りました。
その後、15年を経過し、山田の氏を名乗っていた子供も社会人となり、また、自分自身は鈴木を名乗っている母と同居していることから、鈴木の姓に戻りたいと思い、氏変更の許可を家庭裁判所へ申請しました。

一審は、氏を変更する「やむを得ない事由」(戸籍法107条1項)があるとは言えないとして、変更を許可しませんでした。
しかし、二審は、やむを得ない事由があるものとして、氏の変更を許可しました。

離婚後15年以上経過後、婚姻前の氏に戻れるか?

離婚後15年以上も婚姻時の氏を使用していた場合に婚姻前の氏(旧姓)に戻れるでしょうか?

戸籍法107条1項は「やむを得ない事由」があれば家庭裁判所の許可をえて氏の変更ができると規定します。
個人の識別手段である氏が簡単に変更されると社会が混乱するので変更の要件は厳格に解釈されています。

最近の裁判所の傾向としては、婚姻前の氏(旧姓)の変更については通常の氏の変更よりも「緩やか」に解釈する裁判例が増えています。

例えば、学齢期の子供に婚姻時の氏の続称を必要としたため、お母さんも旧姓に戻らず婚姻時の氏を使用することとしたが、子供の成人等によって必要性が消滅
した場合とか、親の高齢化によって親と同居して家業のため旧姓に戻る必要性が生じた場合等には、氏の変更を認める傾向にあるようです。

最近の裁判例としては、東京高裁平成26年10月2日決定があります。

今後もこの流れは続きそうです。

親権の変更

いったん親権者を決めた後、変更することはできるでしょうか?

親権者を変更することはできますが、父母2人の話し合いだけで変更することは認められていません。

父母が親権者の変更に同意していても、家庭裁判所に調停の申立をしなければなりません。

家庭裁判所は、子の福祉を考慮し、親権の変更が妥当でないと判断した場合は調停の成立を認めません。

父母の間で親権者変更の合意がない場合でも、親権者でない親の方から、親権変更の調停あるいは審判の申立をすることができます。

家庭裁判所は、子の福祉の観点から、親権の変更をする必要があるかどうかを判断します。

そして親権変更の場合、それまで子が親権者のもとで生活をしているという現状がありますので、そのような状況を変更してでも親権者を変更した方が子の福祉に適するといった特別な事情がない限り、親権変更の審判をすることはありません。

具体的には、親権者が子どもを虐待しているとか、親権者にネグレクトの事実が認められるとか、子どもの居住環境が劣悪であるなどの事情がなければ、親権変更が認められることは困難といえます。

決めた養育費の金額は代えられるの?

養育費の増減

離婚に際しては、親権者の指定、養育費の金額、面会交流について協議して決めないといけないとされています。
養育費は子どもの年齢にもよりますが、長期間の給付になりますので、養育費を支払う親が将来どのような事態になるかは予想できません。

離婚に際しては、離婚時の夫婦の収入により養育費の金額が決められます。
しかし、離婚後養育費を支払う親がリストラに会い決めた金額を支払えなくなったり、養育費を受け取る側の親が再婚したりして
別に子どもを扶養してくれる人ができたりすることもあります。

そういう時は、養育費の減額を求めることになります。減額につき協議できなければ調停の申立をすることになります。
減額が決まるまでは、従来の金額の養育費を支払う義務があります。

反対に養育費を支払う親の収入が増えたりした場合は、養育費の増額を請求できる場合もあります。
一旦養育費を決めても、その後の事情の変更により、増減が可能です。

離婚後の財産分与

離婚した際には、何の財産分与も受けることなく離婚をしてしまった。
だけれども、元配偶者(多くの場合は元夫のことが多いでしょうが)は、預貯金や株式を持っているので、今からでも財産分与の請求をしたいという場合もあるかと思いますが、離婚した後でも財産分与の請求ができるのでしょうか。

答えは、できます。
もちろん、その財産が夫婦の共有財産であったことは必要ですが、離婚した後でも財産分与の請求は可能です。
ただし、離婚後2年以内という制限がありますので、その点には注意が必要です。

生命保険金契約で問題

生命保険金は誰のもの?(とある法律相談)

Aさんは、生命保険を契約し(被保険者A)、その保険金受取人として「妻B」と指定していた。その後、妻Bと離婚し、Cと再婚し、子供も生まれた。
その後、Aさんは、保険金の受取人を変更しないまま、死亡した。この生命保険金は誰が受け取ることができるか。

最高裁は、元妻Bさんが生命保険金を受け取ることができるとしています(最高裁昭和58年9月8日判決)。「妻」という続柄に重きを置かず、「B」という名前に重きを置きました。

離婚をしたときは、かならず保険の見直しを検討しなければいけない一例です。なお、生命保険金の受取人が単に「妻」とだけ記載されていれば、Cさんが保険金を受け取ることができたと思われます。

離婚をした人は遺言の検討を

子供がいる夫婦で離婚が成立した人に対して、遺言を作ることを考えて下さい、と言うようにしています。

たとえば、幼い子供がいる夫婦が離婚して、母親が親権を取得したようなケースを考えてみます。

父親は、離婚をした後でも、自分が亡くなれば、その遺産はその子供に相続されます。

しかし、離婚後、父親と子供との交流がなくなるケースもあり、そうした場合に子供に遺産が相続されることが本人の考えと合致しないことも多いです。

ですから、遺言を作ることを検討した方が良いのです。

また、母親の方でも、自分が亡くなった後、(未成年の)子供を父親に面倒を見てもらいたくないような事情があれば、他の人を子供の後見人に指定する遺言を書き残した方がいいこともあります。

ですから、やはり遺言を検討した方が良いのです。