詐欺

被害届けを警察が受理してくれない。

被害届・告訴・告発

空き巣に入られてお金や貴金属類が盗まれたという事件は、警察で被害届けを受理してもらうのが難しくありません。
電話で通報するだけでも、警察官が来てくれます。
詐欺でも、「振り込め詐欺」のように、社会的関心が高まっている事件は、警察も世間のニーズに応えるべく、捜査態勢を敷いているので、スムーズに被害届けを受理してくれます。
しかし、取り込み詐欺や先物取引勧誘詐欺、背任事件など経済事犯がらみの事案になってくると、通り一遍の被害届では受理されない場合があります。
これらの事案は、被害が発生していたとしても、故意(例えば、被害者への働きかけのときから騙す意思があったこと)の証明が大変に難しいからです。
では、どうすればいいのでしょう。諦めますか。諦めるには悔し過ぎます。そんなときは、法律専門家の弁護士に相談し、犯罪の構成要件を踏まえた証拠を揃えて告訴し、又は告発する方法があります。ここで、被害届と告訴や告発とがどう違うかを見ておきましょう。

(1)   被害届

被害者が被害を受けた事実を捜査機関に申告することです。被害届は、捜査の端緒(きっかけ)になりますが、捜査機関は捜査を進める法的義務がありません。

(2)   告訴

犯罪の被害者が、捜査機関に対して犯人の処罰を求める意思表示です。単なる捜査の端緒になるだけではなく、親告罪の場合は、告訴がなければ犯人を処罰することができません。親告罪とされていない一般の犯罪でも、警察は告訴を受けたときは、その書類及び証拠を検察官に送付する義務があります。告訴は、次の告発と同じく、口頭でもできますし、代理人によって行うこともできます。

(3)   告発

告発は、被害者以外の者が、捜査機関に対して犯人の処罰を求める意思表示です。誰でもすることができます。しかし、親告罪とされている犯罪については、告発しても何ら法的効力がないので、受理されません。警察は、告発を受けたときは、告訴と同じく、その書類及び証拠を検察官に送付する義務があります。

詐欺師との戦いに終わりはない

80代の女性宅に、宝石加工会社員を名乗る男から「あなた名義でダイヤモンドの購入予約をしてほしい」と電話があり女性は承諾。
女性は「予約金」を支払うことになり、指示通り「ゆうパック」で「現金」を郵送した。
その際、女性は「現金」を「アルミホイル」に包んで送金するよう指示されたという。その後、業者との連絡が途絶え、詐欺と発覚。
特殊詐欺において、ゆうパックによる現金の郵送が使われる例が多いことから、近時、日本郵便は、「X線透視」をして現金封入の有無を確認する対策をしています。
しかし、詐欺師らは「アルミホイル」で現金を包んで送金させる手口を使い、X線対策逃れをしているようです。また、ゆうパックの品名に「フイルム」と書かせて、X線透視対策が行われないようにする手口もあるそうです。
詐欺師との戦いには終わりがありません。

詐欺で告訴され、無実を訴える。

不起訴に向けてなすべきこと

詐欺の事件は被害者からの告訴がなくても起訴して有罪の判決を宣告することができる刑事事件で、非親告罪の一種類です。
その意味で、詐欺事件の告訴は被害届などと同じく捜査を開始するきっかけに過ぎません。
そうは言っても、告訴されたということは、警察か検察庁が告訴を受理して捜査が開始されていることを意味しています。そのため、いずれかの日に、警察とか検察庁から呼び出しの連絡がきます。
ご質問によると、あなたは詐欺で告訴されているが無実だとのことです。それが本当であれば、起訴されることなく済ませる不起訴処分を手にすることが当面の目標になります。この目標を達成するにはどうすればいいのでしょうか。

1 最初にすることは、告訴されている事件の内容を把握することです。

すなわち、あなたが、いつ、何処で、誰に、どんな嘘をついて、何を騙し取ったと言われているのかを知ることから、不起訴に向けての第1歩が始まります。告訴されたあなたが、警察や検察庁に呼び出された場合、どのような内容の告訴になっているのかをしっかり確認してから、それに反論する弁明の準備をすることが大事です。
なお、警察や検察庁から呼び出されても、その日時に出頭できない場合は、必ず電話などの方法で、出頭できない理由を連絡し、いつであれば出頭できるかを伝えておきます。何の連絡もしないで不出頭を繰り返していると、逮捕されかねないので、連絡だけはしておきましょう。

2 告訴されている内容を把握した後は、それに反論する弁明に移ります。

告訴の内容に対する弁明は、裏付けのある弁明を中心に展開する。例えば、日記帳や予定表に記載してある事柄とか、通帳や伝票などの取引記録、メールの交信録など、自分の弁明が嘘ではないことを証明できる証拠資料をできるだけ探し出して、それを見せながら説明するように心がけます。そうなると、警察や検察庁への出頭が1度や2度では終わらないかも知れませんが、無実の詐欺で起訴されるのを防ぐためですから、頑張りましょう。

3 あなたの弁明で、相手方の告訴が無理筋だということがはっきりすれば、「嫌疑なし」で不起訴になります。

また、告訴した被害者の供述と告訴されたあなたの弁明と、いずれが真実か必ずしもはっきりしないこともあります。
そのような場合は、あなたの弁明を覆して被害者の供述が真実であると証明するに足りる証拠が不十分であれば「嫌疑不十分」として不起訴になります。

4 一般的に、被害届ではなく告訴された場合は、事件の内容が複雑で込み入っているケースが多いと言えます。

そうなると、不起訴に向けての準備や対策も刑事事件の専門弁護士に手助けしてもらわないと、一筋縄ではいかないと思います。
したがって、告訴されたことが分かったら、無実の詐欺で起訴されるのを防ぐためには、できるだけ早く弁護士に相談するのが賢明です。